発達障害と感覚の問題
2018-03-19 更新
はじめに
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚など、人にはさまざまな感覚が生まれつき備わっています。発達障害の子供たちの多くは、これらの感覚に偏りがあることが多く、それが問題行動の原因になっているのではないかと考えられています。ここでは、発達障害の子供に見られる感覚障害とその対処法やトレーニング方法などについて詳しく説明していきます。
私たちに備わっている感覚の種類
私たちに備わっている感覚には、文字や色、空間の奥行きなどを見る「視覚」、声や物音を聞き分ける「聴覚」、匂いを感じる「嗅覚」、物の味を感じる「味覚」、皮膚を通して触れる・触れられる感触を認知する「触覚」といった五感が広く認知されています。
この他にも、筋肉や関節の動きを細かく感知する「固有覚」、回転、傾きなどを認知する「前庭覚」という2つの感覚があります。
この固有覚と前庭覚の2つの感覚が、発達障害の子供たちの行動と特に大きく関わっていると考えられ、近年注目を集めています。
発達障害児の感覚障害
では、固有覚と前庭覚の2つの感覚に偏り(感覚障害)があった場合、どのような症状が表れるのでしょうか。
固有覚は、手足など体の関節の曲げ伸ばし、筋肉の動きを脳に伝える感覚です。固有覚によって関節がどの程度曲がっているか、筋肉の張りがどの程度かを知覚して、力の加減がコントロールできます。この感覚に偏りがあると、動きがぎこちない、不器用、行動ががさつ、物を乱暴に扱うといった行動がみられます。
前庭覚とは、平衡感覚、バランス感覚とも呼ばれ、姿勢をコントロールする感覚です。
この感覚に偏りがあると、姿勢が保てず、転びやすい、すぐに寝そべる、まっすぐに歩けない、などの行動が見られます。
また、感覚の感じ方も人によって違いがあります。大きく分けて、過剰に感じる「敏感タイプ」と感覚が鈍い「鈍感タイプ」に分けられ、それぞれ行動に特徴が見られます。
敏感タイプ:少しの刺激をとても強く感じます。そのため刺激を避けるための行動が目立ちます。
- 動きが遅くぼーっとする
- すぐ寝転がる
- 人が多いことに耐えられず教室などを飛び出す
鈍感タイプ:通常よりも刺激を感じにくく、強い刺激を求める行動が目立ちます。
- 体をゆする
- 飛んだり跳ねたりと落ち着かない
このように、発達障害の子供の行動は、感覚の偏りが原因となっているため、本人ではコントロールができないものです。そのため、問題行動に対して叱るのではなく、感覚のトレーニングを行うことが重要になります。
トレーニングで改善
感覚障害が原因の問題行動は、トレーニングや周囲のサポートによって軽減することが可能です。例えば、じっとしていられない多動の場合には、授業中に10分おきに先生へ提出や採点をしてもらうなど、授業に動きを取り入れる工夫をします。日頃の生活でのトレーニングに加え、作業療法士による訓練を取り入れることも効果的でしょう。
何よりも重要なことは、「感覚障害は自分ではコントロールできず、我慢できるものではない」ということを周囲が理解して接することです。
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