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発達障害とは?家庭でできる学習支援とは?発達障害の分類・症状・早期療育・療育支援・家庭療育とはどのようなもの?

1. 発達障害とは?

発達障害の定義

発達障害とは「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」です。※発達障害者支援法の定義より

ヒトの脳には「記憶・思考・判断」などの機能が備わっています。脳の機能は、環境からの刺激によってバランスよく発達し、日常生活や社会生活に適応できるように育まれます。発達障害は、生まれつきの脳機能の発達に凸凹が生じている状態だと考えられ、過ごす環境や周囲の人々との関わりのミスマッチから、社会生活に困難が生じる可能性があるとされています。


発達障害の分類

発達障害は、広汎性発達障害(PDD)・学習障害(LD)・注意欠如・多動性障害(ADHD)の大きく3つに分類されます。広汎性発達障害にはアスペルガー症候群、自閉症などが含まれます。発達障害は類似した症状が現れたり併発するため、診断名は専門医の判断に委ねられています。通常学級に在籍する児童・生徒の中で発達障害の特徴を示す子どもは、15人に1人の割合(全体の約6.5%)になります。※文部科学省の2012年の調査より

広汎性発達障害

■自閉症スペクトラム

アスペルガー症候群

自閉症

知的障害

学習障害

注意欠陥・多動性障害

■限局性学習症/限局性学習障害

■注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害

赤文字は、DSM-5(米国精神医学会が作成する精神疾患・精神障害の分類マニュアル)による表記です。

2. 発達障害の症状と原因とは?

発達障害の症状は、先天的な脳機能障害が原因となって生じると考えられていますが、その詳細なメカニズムは解明されていません。しかし、かつての「親のしつけ方や育て方が悪い・親の愛情が不足している」といった心因論は医学的に否定されています。
現在、発達障害の原因は、遺伝的要因の他に環境要因が影響し合って発現するという考えが主流になっています。これは、特定の遺伝子によって発症するというシンプルなものではなく、また遺伝的な要因といっても親から子へ単純に遺伝するという意味でもありません。さらに発達障害は、一つの原因による一つの道筋ではなく、個々が違った道筋で発症すると考えられ、全ての人にあてはまる要因を解明するのは難しく「100人いれば100通りの原因と症状がある」ともいわれています。
いずれにしても症状は低年齢の発達期において発現します。できるだけ早期に子どもの反応や言葉や行動の特徴を見つけ出して理解し、能力を伸ばすための学習環境を整え、療育支援を行っていくことが大切です。

3. 発達障害 診断前の発症年齢

発達障害は、症状が現れて初めてわかる疾患です。そのため障害の種類や程度、性別によっても発症年齢や特徴が異なります。発達障害の種類や症状にもよりますが、乳幼児期頃に疑われ始めることが多く、地域の3歳児検診で指摘されることもあります。
3〜4歳頃、園での集団生活が始まると、言葉やコミュニケーションなどにおいて、特徴的な行動や発達の遅れが目立つようになります。そのため園から相談機関を紹介される場合もあります。

また乳児期の頃であっても「表情が乏しい・視線が合いにくい・集団の遊びができない・言葉に遅れがある」などといった症状から何らかの違和感に気づくこともあります。
さらに乳幼児期は成長に伴って症状の発現が増減しやすいこともあり、診断が見直されたり、変更されることがあります。

学習障害(LD)の場合は、読み書き算数などの学習を経験してから症状が明らかになるため、就学前後の年齢になってから気づくケースがほとんどです。
発達障害が認知されやすくなったものの依然として発達障害に気づかずに見逃され、支援を得られない状況で悪化したり、診断が遅くなったりする場合もあります。

4. 発達障害 相談は専門機関で

お子さまの発達障害を疑ったら無料で相談できる専門機関の相談窓口を利用することをお勧めします。そこで子どもの気になる行動を理解できたり、対処法を教えてもらえる場合があります。まずは、近くの相談センターに行って、専門的な相談や受診が必要なら専門医を紹介してもらいましょう。

  • 保健センター
  • 子育て支援センター
  • 児童発達支援事業所 など

専門医のいる医療機関では検査や診断により、子どもの症状や特性などを知ることができます。大学病院や総合病院などの小児科・児童精神科・小児神経科や発達外来などで診断できますが、子どものかかりつけの個人病院で「発達相談」の記載があれば相談に行くのもいいかもしれません。

専門機関や専門医に相談することで、子どもの特性に気づき、早期に子どもに適したサポートをすることで子どもの負担を軽減できる場合があります。検査や診断によって子どもの特性が専門的に把握でき、持続的な支援が受けられるようにしましょう。それが子どもの能力を伸ばし、自信を持たせることに繋がります。

5. 早期発見・早期療育の重要性とは?

療育は早期療育が効果的であるといわれます。早い段階から適切な治療と学習を行えば、適応障害のない状態で成長する可能性があるため、早期発見が重要になります。

発達障害は、症状や特性が多種多様で一人ひとり違います。
さらに発達障害は身体的な障害ではないため第三者からわかりにくく、誤解されたり理解を得られないこともあるため「見えない障害」ともいわれます。
発見が遅れると適切な支援を受けられず、言葉、コミュニケーション、学習面での読み書きなどの発達の遅れや、集団生活のルールを守れず、園や学校に適応できなかったりします。
それらが要因となり思春期以降に自己否定や自傷行為、鬱(うつ)などの「二次障害」を引き起こしてしまうケースもあります。

発達障害の子どもは、生活に必要なスキルを集中的にトレーニングすることで効果が出やすくなります。お子さまの特性を把握した専門家のサポートを受けながら、発達に合わせて段階的にトレーニングしていくのが望ましい取り組み方です。
重要なのは、断続的な取り組みよりも、持続的な支援です。特に小学校に入学する前の幼児は、一日の大半を家庭で過ごします。そのため療育センターと合わせて、家庭での療育トレーニングも効果的です。
発達障害は、早期に発見し、早い段階から子どもの発達に合わせた療育を行っていくことが大切です。

6. 発達障害 療育とは?

発達障害の療育とは、子どもが社会的に自立できるように医療やトレーニングなどを通じて取り組む治療と教育のことです。子どもが生活しやすくなるように専門的な支援プログラムで一人ひとりの子どもに適したアプローチで学習や自立に向けての療育トレーニングをサポートします。

文部科学省の「障害者基本計画」では「障害のある子ども一人ひとりのニーズに応じてきめ細かな支援を行うために、乳幼児期から学校卒業後まで一貫して計画的に教育や療育を行う」ことが基本方針として掲げられています。

広汎性発達障害 療育方法とは?

現在のところ広汎性発達障害の根本的な治療方法はないとされています。しかし、療育によってコミュニケーションの取り方を学んだり、友達を作ったりすることができ、生活面での困難に対処しやすくなります。療育の効果は個人差があり、子どもに合った療育が必要となります。療育は親にとって心の面でのケアサポートになります。

広汎性発達障害の療育方法でよく知られている取り組みを簡単にご紹介します。

ABA(応用行動分析/Applied Behavior Analysis)

人間の行動を個人と環境の相互作用で分析し、実社会の諸問題の解決に応用していく理論と実践の体系。

PECS(ペックス/Picture Exchange Communication System)

応用行動分析の原理に基づいて作成された絵カードを使ってコミュニケーションを支援するプログラム。

SST(ソーシャルスキル トレーニング/Social Skills Training)

対人関係や集団行動を円滑に営むための社会生活技能で、自分の特性を理解し自己管理するトレーニングの総称。

TEACCH(ティーチ/Treatment and Education for Autistic and related Communication handicapped Children)

自立と生活の質的向上を目的に自閉症スペクトラム障害(ASD)を対象にした生涯支援プログラム。

7. 発達障害 家庭療育とは?

子どもにとって園や学校での集団生活は困ることの連続です。疲れて帰ってくる子どもにとって家庭は、一番安心して過ごせるオアシスでなくてはなりません。
そんな家庭でできる療育とは何でしょうか?それは、子どもの心のケアを第一に考えたサポートです。お子さまが安心できる環境をつくり、ストレスを与えないように配慮したコミュニケーション方法で、お子さまの一番の味方になってあげましょう。

家庭療育で心がけたいこと

  • 子どもを安心して休ませる
  • 息抜きになるような、好きなことをさせる
  • パニックの要因を少なくする
  • 何をするのか、どこに行くのかを事前に伝える
  • 指示は、具体的なものを使って示す
  • よかったら褒める

これらを心がけるだけで、子どもの負担は軽くなっていきます。そして心のケアの先にあるのが家庭でできる学習です。学びは、よい成績を取るものではありません。大切なことは、子どもに「学ぶ楽しさ」を気づかせることです。成長に合わせて子どもが必要とする能力を身につけさせ、困らないようにするものです。
子どもがやりたがらない学習法は、ストレスを貯め込むばかり。お子さまに適した教材とはいえません。
子どもが夢中になる、楽しんで取り組む、そんな教材を上手く使って「できた! 褒められた!」という子どもの純粋な喜びを「明日への頑張る力」に変えていきましょう。

8. 発達障害を受け入れるには?

我が子に発達障害の可能性を指摘されたり、診断名を告げられたら、どの親でとても大きなショックを受けます。そして、子どもの障害を認めたくないという気持ちでいっぱいになるのは当然のことです。

子どもの発達障害を受け入れのは、簡単なことではありません。でも、子どもに寄り添いながら少しずつ理解していくことで、他の子どもには無い特性や能力の数々が必ず見えてきます。
まずは近くの相談センターに行って専門的な相談をした上で、受診が必要なら専門医を紹介してもらいましょう
子どもの発達障害を悲観的にみないで受け入れる。そんな心の準備ができたときが、療育への第一歩になるのかもしれません。

子どもの発達障害 周りにも知らせるの?

子どもの発達障害は、周りの人たちに知らせた方がよいのでしょうか?親なら一度は迷う問題です。子どもの発達障害を知ったら「周りはどう思うのか?」、自分が発達障害だと知って「子どもが傷つかないか?」「いじめは大丈夫か?」などと不安になるのは当然のことです。
発達障害は、生まれつきの脳機能の発達に凸凹が生じている状態。そのため園や小学校などの集団生活では周りの人や環境とのミスマッチから困難が生じる可能性があります。もしも周りの人たちが、お子さまが発達障害であることを知らなかったら、誤解や偏見を持たれ、孤立してしまうかもしれません。

お子さまにとって最も大切なことは、適切で手厚い支援を受けることです。支援の必要性を感じたら、両親、保育園(所)、幼稚園、小学校など、お子さまに関わる方々に知らせ、発達障害への理解を促しましょう。お子さまの成長と発達をサポートする環境を整えることは、親にしかできない重要な役割なのです。

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9. できないことでなく、できることに着目する

発達障害の子どもは「他の子と違う世界を見ている」といわれます。もしかすると他の子と同じような生き方は、できないのかもしれません。でも見方を換えれば、他の子と違った視点で、他の子と違った生き方ができるということです。同じ世界に生きていながら、他とは少し違ったユニークな人生を送ることができる。それがあなたの子どもなのです。

まずは、子どもをよく観察しましょう。「好きなこと・嫌いなこと/得意なこと・苦手なこと」などを整理して、あなたなりの「子どもの特性」を把握することが大切です。そして、子どもができないことよりも、できることに着目してみましょう。苦手なことは後回しにして、好きなこと・得意なことを優先させて不要なストレスを排除しながら、失敗させないようにしながら「自分にもできるんだ」という自信を積み重ねていきましょう。

あなた自身の心のケアを 忘れずに!

地域の療育施設や専門医とコンタクトが取れても、予約がなかなか取れずにイライラが募るかもしれません。または子どもの困りごとが重なって憂鬱になることもあるでしょう。そんなときは、あなた自身の心のケアとして、カウンセリングを受けるのもひとつの手です。

発達障害の子育て相談ができる専門資格を持ったカウンセラーに子どもの困りごとなどを吐き出してスッキリしましょう。
電話で受けられるカウンセリングも増えています。顔が見えない分だけ、気軽なので普段、口に出せない困りごとを積極的に開示してみましょう。
子どもにとって頼れるのは、「お母さん」であるあなただけ。
重要なのは、断続的な取り組みよりも、マラソンのような持続的な支援です。だからこそお母さんである、あなた自身の心のケアに大切な意味があるのです。

10. 「改善しない」という先入観を捨てる

発達障害の症状や特徴は一人ひとり違います。診断名は各症状の強さによってつけられ、成長過程において目立つ症状が変化するので診断名が変わることがあります。
また広汎性発達障害(PDD)、学習障害(LD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)は併発することも多いため、自閉症と診断されたからと療育トレーニングの方法を決めつけてしまうのも考えものです。診断名はあくまでも目立つ部分として捉え、「子どもの特性」をご自身の目で見極めた上で、療育や支援に反映させることが大切です。

発達障害は「改善しない」という先入観も考えものです。諦めともとれる先入観がお子さまの可能性の芽をつぶしてしまいかねない危険性をはらんでいます。個人差はあるものの適切な療育トレーニングによって得意な能力を伸ばした結果、自分の持ち味を生かして社会に適応していくケースは多くみられます。

11. 発達障害 子どもの自立に向けて

発達障害を取り巻く環境は「できないことを見つけ出して直す」という観点から「周りがどう手助けしたら社会参加ができるか」という考え方に変化しています。

特別支援教育の目標も子どもの自立や社会参加に向けた取り組を支援するという視点に立ち、子どもの持つ力を高め、生活や学習上の困りごとを克服するために適切な指導や必要な支援を行うというものになっています。

子どもの適応力を向上させることも重要ですが、多様な特性のある子どもを社会がいかに受容していき、助け合っていけるかが益々大切になっていくでしょう。
その原動力になるのが「インクルーシブ教育」です。

インクルーシブ教育とは?

インクルーシブ教育は子ども一人ひとりが障害の有無に関係なく、誰もが望めば自分に合った配慮を受けながら、地域の通常学級で学べることを目指す教育理念と実践プロセスです。日本では2010年に文部科学省によりインクルーシブ教育理念の方向性が示され、学校の先生たちの意識を変える取り組みが行われています。その取り組みの一つが「多様な子どもが共に学ぶための基礎的な環境を整備する」ものです。

インクルーシブ教育 環境整備例

  • 特別支援学校、特別支援学級、通常学級などの学び場を用意し、行き来できる体制を整える
  • 専門性のある支援体制や教員の育成
  • 特別支援学級と通常学級の間で共同学習を行う
  • 個別の支援計画の作成 etc.

さらに公立の学校では「合理的配慮」が義務付けられ、学校や教員の合理的な配慮によって子どもの特性や環境による困りごとのサポートができるようになりました。

合理的配慮 工夫例

  • 体操服などを置く場所が決めて、誰でも持ち物の整理がしやすいようにする
  • 掲示物を減らすなど、視覚刺激に敏感な子どもでも授業に集中できるようにする
  • 先生は情報を伝えるときには、目に見える文字や絵で視覚的に示して理解しやすくする
  • 授業の中で簡単な問いに答える機会を作り、全員が参加できるような授業にする etc.

インクルーシブ教育によって発達障害のない子どもも幼いうちから「社会にはさまざまな人がいて、不自由な部分を持つ人もいる」ことを体験・理解し、多様性を尊重することを学ぶことができます。
それは豊かな人格発達に繋がり、子どもを持つ親に対しても発達障害への理解を促すものとなります。

12. インクルーシブ教育 就学先決定の仕組み

発達障害の子どもや保護者の意思を尊重した上で就学先が決めらるようになりました。

専門家による早期からの支

就学時検

特別支援学級の就学基

基準に当てはま

基準に当てはまらな

教育委員会
状況・意見をふまえて就学先を検

  • ・障害の程度
  • ・学校・地域の状況
  • ・専門的見地(医学・教育学・心理学)

子どもと保護者の意見
最大限に尊重

教育委員会が就学先を決

小・中学校特別支援学級含む

特別支援学校

就学先を柔軟に見直す
※現在、中学校の特別支援学級の卒業生の約6割が 特別支援学校の高等部に進学

幼少期からの発達相談や情報提供が積極的に行われるようになり、1歳半検診や、3歳児検診の際に発達の遅れがあると診断された場合に、専門家からアドバイスを受けられます。また教育委員会では、幼稚園、保育園などの子どもの様子をふまえ、就学までの間に一人ひとりに合わせた個別の支援計画書を作成することを推奨しています。計画書は就学先を決定する際の資料として活用されたり、就学後の教育支援の手立てとして活用されたりします。

13. 発達障害 将来の展望

インクルーシブ教育が学校に導入され、学校の授業や教員の心構えが変化しつつも、具体的にどのように授業を行い、環境を整えていくかについては、まだまだ多くの課題が残ります。学校側が通常学級に通わせることに力を入れることに留まり、子どもの能力や困りごとに合わせたサポートが達成されていないという現実もあります

通常学級が絶対であるわけもなく、子どもの困難に応じて、環境を変えることも必要です。
大切なのは、子どもの能力を最大限に伸ばせる環境を整え「学び・遊び・過ごす」ことです。

担任の先生や特別支援学級の先生と連携をとりながら、子どもに適した環境を選んでいくことも大切ですが、子どもとお母さんの安心基地である、家庭こそ、掛けがえのない心の拠り所であることを忘れないでください。

インクルーシブ教育が目指すのは「一人ひとり丁寧に最適な支援を提供すること」と「みんなで一緒に学べる環境を作ること」の実現です。その先にあるのは「共に生きる社会」であり、全ての人が暮らしやすく誰もこぼれ落ちることのない社会です。

インクルーシブ教育の導入で就学先決定の仕組みや、通常学級で障害の子どもが学べる環境が整備されつつあり、お子さまが自立しやすい社会へと世界は、間違いなく向かっているのです。

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