学習障害とは?
3つの分類(読字障害・書字障害・算数障害)症状と対処法(幼児〜小学生)・家族の支援・療育手帳の取得方法など
学習障害(LD)とは
目次
- 1.学習障害 定義
- 2.学習障害 3つの分類
- 3.学習障害 分類別 特徴
- 4.学習障害かな?と思ったら
- 5.学習障害 年齢別 症状
※表記について
アメリカ精神医学会が作っている「心の病気に関する診断基準」DSM-5では、自閉症やアスペルガー症候群は「自閉症スペクトラム障害」という診断名に統一しています。しかし、現在は、統一前の診断名の認知度の高さから「自閉症」「アスペルガー症候群」で検索される方が多くいらっしゃいます。本サイトでは、自閉症とアスペルガー症候群については、そのままの診断名を用いて解説しています。
■1. 学習障害 定義
学習障害(LD)は、知的発達に遅れがないものの「聞く・話す・読む・書く・計算・推論する」能力のうち、一つ以上の特定の能力、または複数の能力の習得や使用に著しい困難を示す発達障害のことです。
※学習障害は「LD」と略されることがあります(LD=Learning Disabilities)
文部科学省は、以下のように定義しています。
基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。
学習障害は、その原因として中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。
※医学的な診断基準と文部科学省が定める定義の間には、若干の違いがあります。本サイトでは、文部科学省の定義を考慮しつつ、世界保健機関の「ICD-10」による「3つの分類」に従って解説します。
■2. 学習障害 3つの分類
学習障害(LD)の特徴は、主に3つに分類されます。一つ目は、読むことが困難な「読字障害」、二つ目は、書くことが困難な「書字障害」、三つ目は、計算や推論が困難な「算数障害」です。
読字障害
ディスレクシア
書字障害
ディスグラフィア
算数障害
ディスカリキュリア
※上記に付随して「聞く・話す」に関する障害も含まれます。
学習障害の発現
就学前に読み書きや計算をする機会が少ない子どもの場合、本格的な授業が始まって成績不振が明らかになる小学2〜4年生(7〜11歳)まで学習障害に気づかないこともあります。周りからは単なる苦手分野だと判断されるため、学業に対する子どもの意欲と自信が徐々に失われていくことがあります。
■3. 学習障害 分類別 特徴
学習障害は「読字障害」「書字障害」「算数障害」の3つに分類されます。それぞれの障害の特徴は、個々の特性で異なり、同じ分類であっても、そこにある全ての特徴が当てはまるわけではありません。また、他の発達障害がある子どもは、その特徴が合わさって症状として発現することもあります。
1. 読字障害 / ディスレクシア
※ディスレクシア(dyslexia)には「読みの困難」という意味があります。
読む能力に困難があるのが「読字障害」です。学習障害の中で最も多く見られる症状で、欧米では約10〜20%がこの症状があると報告されています。
文字が読めない読字障害は、文字を書く「書字」にも影響することが多く「読み書き」の障害ともいわれます。
読字障害には「文字を見て発音できない」という特徴があり、原因は情報伝達の際に脳がうまく処理できないためだと考えられています。さらに文字の見え方にも特徴があり「文字がぼやける」「黒い塊で見える」「逆さまに見える」「図形に見える」など、一般的な見え方と違って認知されてしまいます。
また、読字障害の子どもは、音韻認識が弱いこともあり、ひらがなの一文字ずつは覚えられても、単語になると理解できなくなってしまうこともあります。さらに、漢字の音読みと訓読みの使い分けができなかったり、単語や文節の途中で区切って読むなど、変わった読み方をしてしまいます。
読字障害の特徴
- 「ぬ」と「め」、「シ」と「ツ」など形の似た文字を読み間違える。
- 「っ」「ゃ」「ょ」のように促音(小さい文字)を認識できない。
- 文章を読んでいると、読んでいる所がわからなくなる。
- 文章の飛ばし読み、拾い読み、斜め読みなどは苦手。
- 文章や単語の区切りがわからない。読み方に特徴がある。
- 音声などの耳からの情報に対しては、理解しやすい傾向がある。
2. 書字障害 / ディスグラフィア
※ディスグラフィア(dysgraphia)には「書きの困難」という意味があります。
「文字が書けない・文字を書き写せない」など、「書字」や「書写」に困難があるのが「書字障害」です。「文字が読めるが書けない」という場合も書字障害に分類されます。
書字障害の子どもには、文字が左右に反転する「鏡文字」などが見られ、文字を書くという動作自体が苦手です。
原因は、大脳の機能分化の不具合などで、脳から手指への伝達機能がうまく働いていないためと考えられています。そのため「書字や書写が苦手」「文字を書くのが遅い」などの症状となって現れます。
書字障害の特徴
- 誤字脱字や、書き順の間違いが多い。
- 鏡文字や、でたらめな文字を書く。
- 黒板などの文字が書き写せない。(書写が遅い)
- 漢字の読み書きが苦手。(覚えられない)
- 文字の大きさが揃わない。(マス目からはみ出す)
- 文字の形が読めないほど崩れる。
3. 算数障害 / ディスカリキュリア
※ディスカリキュリア(dyscalculia)には「計算力の困難」という意味があります。
数字そのものの概念や規則性、数式で用いる記号(+ ー × ÷)の認識能力に困難があるのが「算数障害」です。さらに算数の問いから答を導き出すのに必要な推論の能力にも困難を抱えています。
算数障害の子どもは、見た情報を認知・記憶・イメージする処理機能である「視覚認知能力」が弱い傾向にあります。そのため、数字を揃えて書く、余白のバランスを取る、数字と記号の距離を取るなどが苦手です。筆算では、数字の桁がずれることも多く、計算がうまくできません。
算数障害は、数字や計算、推論が必要な図形などに関してのみ症状が現れる子どもが多いため、算数の学習を始めてから発見される場合がほとんどです。
算数障害の特徴
- 一桁の数字や簡単な計算記号を理解し難い。
- 繰り上げ計算、繰り下げ計算ができない。
- 数の大小や順列がよくわからない。
- 文章問題の答の求め方が理解できない。
- 図形やグラフを使った問題が理解できない。
■4. 学習障害かな?と思ったら
学習障害は、子どもが幼いほど判断するのが難しい障害です。幼児の場合は、専門家に相談し、就学児であれば、担任の先生に相談するのもいいかもしれません。学校での生活の様子などを配慮して、それらを考慮した専門家を紹介してくれます。
専門機関に相談
もしも、お子さまに症状が見られたら専門機関での相談をお勧めします。学習障害は、できるだけ早期に療育や学習支援などで対処しておくことで、その後の発育に大きな違いがみられます。お子さまに困りごとがある場合、学習障害でないと診断されても、さまざまなアドバイスを受けられることが多いので、勇気を出して相談してみましょう。
まずは、以下の専門機関で!!
- 保健センター
- 子育て支援センター
- 児童発達支援事業所
- 発達障害者支援センター
※上記は、子どもの場合です。
周りが気づきにくい学習障害は、子どもが一人で悩んで辛い思いをしていることも少なくありません。できるだけ早期から家庭療育をスタートさせ、子どもが困らないように必要な能力を学ばせるトレーニングをしましょう。
また、トラブルを未然に防ぐフォローの仕方をご家族で学び、子どもの生きやすい環境を作っていくことも大切です。子どもには、断続的な取り組みよりも、持続的な支援が必要です。学校教育から就労支援へとライフステージを通して自立に向けたサポートを行っていきましょう。
■5. 学習障害 年齢別 症状
学習障害の症状は、学習によって発現するので就学前に見極めるのは難しいかもしれません。しかし知能が育ち、本格的な学習が始まる小学生になると症状の見え方が顕著になり判断しやすくなります。
学習障害には、ADHDや自閉症などの他の発達障害の合併症を持っている子どもも多く、その場合は、乳幼児期に特徴的な症状が現れる場合もあります。
乳児期に表出する他の発達障害の特徴としては「抱っこされるのを嫌がる」「視線を合わせない」「言葉を真似する行為が見られない」などです。
幼児(1歳〜小学校就学)
幼児期の遊びである「言葉や会話」「文字や数字」「手指の巧緻性」などを通して、少しずつ学習障害の特徴が見えてきます。
具体例
- 言葉や文字を覚えるのが遅い。
- 手先が不器用でボタンが留められない。
- 手指や身体の使い方、動かし方がぎこちない。
※幼児期の目安は、他の発達障害を合併している場合です。
小学生(6歳〜12歳)
小学生になって読み書きに困難があったり、特定の科目に遅れがある場合は、学習障害の可能性があります。
1. 読字障害(読むことが苦手)
具体例
- ひらがな、数字、漢字のいずれかが読めない。
- 単語を一文字ずつ読み、意味で区切れない。
- 意図せず、文字や行を飛ばして読むことが多い。
- 形の似た文字を読み間違う。
- 文章を読むのを嫌がる。
- 漢字の訓読みと音読みを使い分けられない。
- 拗音、長音、促音で表される文字が読めない。
2. 書字障害(書くことが苦手)
具体例
- 漢字を書く際に鏡文字になる。
- 文字を書く際に余分な線や点を書く。
- 板書きができない。写し書きができない。
- 文字の大きさや形がバラバラになる。
- 文字がマスや罫線からはみ出す。
- 形の似た文字や漢字を書き間違う。
- 漢字のへんとつくりを間違う。
- 意味や音が似ている漢字を間違う。
- 句読点を忘れる。
- 年相応の漢字を書くことができない。
- 間違った助詞を使ってしまう。
3. 算数障害(計算や推論が苦手)
具体例
- 数を覚えるのに時間がかかる。
- 数が数えられない。(とばして数える)
- 数の大小の概念を理解できていない。
- 時計が読めない。(時間がわからない)
- 指を使わないと計算できない。
- 繰り上がり繰り下がりの筆算ができない。
- 位取りを間違う。
- 文章問題が解けない。
- 図形、表、グラフなどが理解できない。
- 作業時間の配分などができない。
- 計算を嫌がる。(計算ができない)
- 九九を覚えられない。(暗記できても計算できない)
4. 付随する障害(聞くこと・話すことが苦手)
具体例
- 聞き間違いが多い。
- 筋道を立てて話すことができない。
- 言いたいことを言葉で表現できない。
- 相手の言うことが理解できない。
- 書き取った内容は近いが、聞いた通りではない。
■6. 学習障害 子どもの特性
適切で効果的なサポートを行うには、子どもが抱える特性を正確に知っておくことが大切です。
読字障害の子どもの特性
読むことが苦手な「読字障害」の子どもには、大きく2つの特性が隠れています。
1. 視覚による特性
「読字障害」の子どもには、眼球運動に不具合があり、文字を目で追う「追視」などがうまくできません。
そのため、何度も同じ文章を読んでしまったり、飛ばし読みになったりということが起こります。
さらに目のピント(焦点)が合いにくい場合は、文字がにじんで見えたり、二重に見えたりするので、文字に限らず、記号などの形が認知しずらくなってしまいます。
2. マッチングによる特性
一文字ずつの発音はできるのに、文字が組み合わさって単語になると、言葉として理解できない子どもがいます。
(例:「あ」と「し」は発音できるが、それが体の「あし=足」だとは理解していない)
そのため、文章を読んでも単語の途中で区切るなど、たどたどしくなってしまいます。大人になっても物語の文章は読めても、登場人物の心理までは読み取れないケースも出てきます。
そうした原因は、脳内で「文字と言葉」「言葉と意味」などのマッチングがうまく機能していないと考えられます。
書字障害の子どもの特性
書くことが苦手な「書字障害」の子どもには、大きく3つの特性が隠れています。
1. 空間認知による特性
文字の大きさ、形のバラつきやバランスの悪さ、マスや罫線からはみ出したりするのは、物の位置や奥行き、左右や上下の余白配分などの空間認知の能力の低さが関わっています。また鏡文字を書くのは、左右の脳の情報伝達がうまく機能していないといったことが原因とされています。
2. 手指の巧緻性による特性
「筆記用具を正しく持てない」「適度な筆圧を保てない」といった手先の不器用さは、巧緻性の未熟さに関わっています。その原因の一つは、大脳の機能分化に偏りがみられることにあり、文字がきれいに書けないことに繋がっています。
3. ワーキングメモリによる特性
脳のワーキングメモリは作業記憶とも呼ばれ、一時的に記憶を保持する機能を担っています。この機能が未熟な場合「先生の話を聞き取って書く」「黒板の文字をノートに書き写す」など、聞いた話や見た文字を再現するのが難しくなります。
1〜3のいずれの特性も他の発達障害に見られる特性です。そのため「文字が雑で汚いから、何度も繰り返し書く練習をする」といった一般的な学習方法では、なかなか改善されません。
算数障害の子どもの特性
計算や推論が苦手な「算数障害」の子どもには、「読字障害」と「書字障害」にまたがった特性が隠れています。
1. 視覚とマッチングによる特性
「算数障害」の子どもにある「数が数えられない」「位取りを間違う」「図形やグラフを使った問題が苦手」といった特性は、視覚の特性による数字や記号、図形などを認知する能力の低さが影響しています。
また「数の大小」「少数・分数」などがわからないのは、数と数の仕組みのマッチングに不備があるからです。
さらに「読字障害」の特性を持った子どもにとって、結果から原因を推し量る「推論」も当然苦手な課題であり、数の基本的な概念が育まれていないために、計算式や文章問題の答の求め方も理解できません。
2. 空間認知と手指の巧緻性による特性
「時計が読めない」「図形・表・グラフなどが理解できない」のは、視覚から情報をキャッチするのが苦手なため。つまり空間認知力の低さによる特性です。また「コンパスや定規で図形を描けない」「位取りができない」のは、手指の巧緻性の未熟さによる特性です。
3. ワーキングメモリによる特性
「繰り上げ計算、繰り下げ計算ができない」「九九を覚えられない(暗記できても計算できない)」は、数を一時的に覚えて行う計算や、暗算に必要なワーキングメモリが弱いという特性です。このため、指を使った計算から抜け出せないこともあります。
感覚の偏りがある子どもの特性
「聞く・話す」に偏りがある子どもには、大きく3つの特性が隠れています。
1. 聴覚過敏による特性
「聴覚過敏」がある子どもは、周囲の全ての音が等しく同じように聞こえてくるため、選択的に音を拾い集めるのが困難です。教室でのかすかな雑音も先生の声も全て同じ音量で聞こえるので、授業中に先生の話だけを聞き取ることが難しくなります。
そのため、適切に注意を向ける処理ができないため、先生の声だけを一生懸命聞こうとしていても、たくさんの音が聞こえてしまうので混乱しています。
2. 感覚鈍麻による特性
聴覚への反応性が低い「感覚鈍麻」がある子どもは、音を聞き取ることができないために、授業中に上の空になったり、呼びかけても応じなかったりします。
文字の読み書きのスキルは、音を正しく聞き分け、発音することが基礎になっています。そのため聞こえない音は、正しく読み書きすることもできません。
似た音や長音・拗音・促音の聞き分けが難しい例
- 「はち」と「はし」が聞き分けられない。
- 「ひこうき」が「ひこき」のように長音を聞き落とす。
- 「シャベル」が「サベル」のように拗音を聞き落とす。
- 「ねっこ」が「ねこ」のように促音を聞き落とす。
3. 思考の整理統合による特性
感覚の偏りは、脳の中枢神経系である辺縁系や視床下部などにおける感覚情報処理の問題によるのではないかと考えられています。刺激に対して過敏、または鈍感なため、ストレスを抱えていることが多く、考えをまとめることが難しくなります。そのため「人の話を聞いて理解はできるが、自分が話そうとすると言葉が出てこない」「自分の考えをうまく話せない」など、脳内での情報処理がうまく機能しない状態で表出します。
■7. 学習障害を見過ごさずに対処する方法
学習障害に気づくタイミングの多くは、小学校で本格的な学習が始まる就学以降です。もしかして、子どもは就学前から「相手の言葉が聴き取れない」「数えると間違える」「気持ちを伝えられない」「不器用で失敗する」などのサインを発していたのかもしれません。しかし、それらは学習能力に差が出るほどのことではないために、大人から見過ごされてしまうことが多いのです。
ここでは、子どもの学習障害を見過ごさずに対処する方法をご紹介します。
STEP1. 子どもが何に困っているか観察する
日常生活の何気ない場面で、子どもが困っているような素振りを見せたら、観察しながら心に留めておきましょう。その上で、その困りごとが違う場面でも起こるか否かを見極め、子どもを注意深く見守ります。
たとえば、投げられたボールを取れない場合に考えられるのは「ボールがぼやけて見える」「ボールの動きを追視できない」「体がうまく反応しない」などが考えられます。
一方で、絵本を声を出して読ませると、飛ばし読みをしたり、読み方がぎこちなかったりしたら「見る力」を疑うことができます。
このように、さまざまな場面で注意深く観察することで、子どもの苦手とするものが、何によるものなのかが次第にわかってきます。
STEP2. 困りごとを軽減させる工夫を施す
困りごとが何によるものなのかを把握したら、それに合わせた対処法を工夫しましょう。
「見る力」が弱くて文字が読み難い場合は、文字を大きく書いたり、目立つようにラインを引きます。
「聞く力」が弱くて話が聴き取れない場合は、短く明瞭な発声で話したり、子どもが話に集中できるように環境を整えたり、雑音の少ない所で話します。
言葉の理解力、ワーキングメモリ、手先の器用さなどが脆弱な場合は、学習や日常生活を含めたさまざまな場面で影響してくるので、根本的にこれらの力の発達を促すような遊びや運動を行うことも大切です。
STEP3. 苦手な能力を本人に自覚させる
学習障害には知的な発達の遅れがなく、特定の能力、または、複数の能力の習得や使用に困難を示すものです。
そのため一般的な「できるのに努力が足りない」「頑張ればできるはず」といった考えは当てはまらず、できないからと子どもを叱るのはもっての他です。
このような周囲の間違った認識によって、子ども自身がいくら頑張ってもできない自分が嫌になり、自信もやる気もなくしていくケースは少なくありません。
子どもには「苦手な能力があること」「何がそうさせているのか」を自覚させ、それに向けての療育トレーニングなど、前向きな姿勢で継続的な支援を行っていきましょう。
STEP4. 「できた!」を繰り返して自信と意欲を持たせる
子どもにとっての学習は「できた!」という達成感と「褒められた!」という快感によって脳全体の働きをよくする効果があります。
脳の研究では、これを「脳の快感報酬システム」といいます。
大人が子どものレベルに合った課題(トレーニング)を用意して、それを一つひとつクリアさせながら成功体験を積み重ねていく。
これによって子どもは、自信と意欲を持って障害に取り組むことができるようになります。
学習障害には、ADHDなどの障害を併せ持つ子どもも多く、集団生活の生きにくさを感じている子も少なくありません。そんな中で子どもの成長に伴い周囲の環境も変わり、子どもが必要とする支援も変化していきます。
それだけに家庭と学校の間での子どもの情報交換や、専門家によるアドバイスなどが、子どもの自立に向けてより重要なファクターとなってきます。保護者と学校と専門家が連携して、子どものサポートがより良くできる関係性を築いていきましょう。
■8. 家族の支援プログラム
家庭療育では、保護者がお子さまに適した関わり方を学びながら試しながら、日常の子育ての困りごとを一つひとつ解消していくことが可能です。そんなときに役立つのがトレーニングやカウンセリングです。
ペアレントトレーニング
楽しく子育てができるよう支援する保護者向けのプログラムです。始まりは知的障害の子どもを持つご家庭向けに開発されましたが、現在は幅広い目的や方法で展開されています。
お子さまに合った育児の方法を探す手段として活用できます。
ピア・カウンセリング
同じような状況の親同士が対等な立場で意見や情報を交換し、行動の選択について考えます。このとき「共感はするけれど、個人的なアドバイスはしない」「色メガネで解釈しない」「その人の問題の責任は取らない」というルールがあります。
(ペアレントトレーニングと並行して行われています)
メンタリング
発達障害の子どもの子育て経験がある方が「ペアレント・メンター(子育ての先輩)」として、初めて発達障害と向き合う親の相談に応じたり、アドバイスを与えたりします。
※学習障害の疑いがある場合は、すぐに相談、家庭療育を始めましょう。
■9. 学習障害 まとめ
学習障害(LD)は「知的障害」や「勉強嫌い」とは全く異なり、特定分野の能力習得だけが困難な状態です。障害が軽度な場合は、周りの人たちや本人すら気づかずに成長することも少なくありません。
学習障害の特徴として知能に何ら問題がないため、「聞く・話す・読む・書く・計算・推論する」といった特定の能力の偏りを「苦手な分野」と担任やご家族に判断されがちなので、発見しづらい障害になっています。
お子さまのご両親や学校の先生にとって「学習障害」なのか「勉強嫌い」なのかを判断するのは難しいことでしょう。それを見分ける方法の一つには、ある定程度の学習や練習によって子どもが理解できるようなら「勉強嫌い」ですし、頑張っても特定の分野だけ目立って理解できない場合は、「学習障害」を疑ってもいいかもしれません。
学習障害には、集中力の持続が難しいADHDや高機能自閉症などを伴う場合もあるため、的確な診断と検査の下で子どもの特性に応じた対応が求められます。「おかしい…」と感じたら早めに医師の診断を受けましょう。
学習障害の症状は、それぞれに違います。学習障害の子どもの中にも文章が得意な子もいれば、算数が得意な子もいます。重要なのは、てきるだけ早期に障害を発見し、対処していくこと。そのためにもお子さまの小さなサインを見逃さずに成長を見守り、適切なトレーニングをしていきましょう。