発達障害と脳②〜原始反射の残存
2018-03-19 更新
はじめに
発達障害を持つ子供がある程度大きくなっているにも関わらず、赤ちゃんのような言動、行動をすることがあります。これは、産まれたばかりの赤ちゃんに見られる原始反射が強く残っていることが原因です。ここでは、原始反射とはどのようなものなのか、改善するにはどうしたらいいのかを見ていきましょう。
赤ちゃんが生きていくために必要な反射行動
原始反射とは、赤ちゃんが運動能力を身につけるために行う、型にはまった反射的な行動を指します。乳児の手に指を差し出すとぎゅっと握る(把握反射)、口の中に指を入れると吸い付く(吸綴反射)、音などによる刺激を受けて上肢を大きく開いて抱きつこうとする(モロー反射)などの行動が代表的な例としてあげられます。
これは、脳幹に支配されることで発生する赤ちゃん特有の行動であり、大脳の成熟に伴い生後6カ月から12カ月までにはなくなるのが普通です。
生後9カ月あたりから定期検診で反射行動がなくなっているかを確認しますが、消失するはずの時期になっても反射行動が残っていると、脳機能の障害が疑われることになります。
反射行動の残存による生きづらさ
発達障害のある子供は反射行動が残ってしまうことが多く、この症状を「原始反射の残存」と呼び、以下のような弊害が現れることが分かっています。
- つま先立ちになってしまうので歩きにくく、真っ直ぐ歩くのが難しい
- やるべきことに集中できない
- かけっこや縄跳びが上手にできない
- 読み、書きの習得が他の子供より遅い
障害の出方は子供によって異なるので、これらは一例にすぎません。赤ちゃんのような行動、クセが見られ、周囲の子供と比較して明らかに発達が遅いと感じたら原始反射の残存を疑う必要があります。
将来的に生活に支障をきたす場合がありますので、これらの症状は軽視できません。周囲の大人が子供の変化を注意深く見守り、障害のサインを見逃さないようにしましょう。
状況改善には大脳新皮質のトレーニングを
反射行動の残存は、大脳新皮質の働きが弱いために脳幹の本能行動を制御できないことが原因で起こります。つまり、大脳新皮質の発達を促してあげれば、脳内のバランスが本来あるべき状態に近づくため、身体と心のコントロールがスムーズにできるようになります。周りの子供との差が少なくなり、将来的には本人が抱える違和感やストレスも軽減できる可能性があります。
障害を持って生まれたことを悲観するのではなく、不便することなく生活できるように早い段階からサポートすることが大切だと言えます。
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